初めまして。
マジックアートリペア遠藤の代表、遠藤能正と申します。

補修業として、家の中の床や柱、ドアなどに付いたあらゆるキズをキレイに直しています。

家のキズは新品と交換をすることでもキレイにできますが、費用が沢山かかってしまいます。でも

「費用が気になるけれど、家をキレイにしたい。」

そんな声に応えて費用を節約しつつ、キズのあった箇所を限りなく新品に近づけ、「どこにキズがあったかわからない」といった状態にできる仕事をしています。

「こんなにキレイになるならもっと早く直せばよかった!」といった声をいただいたり、

「あなたに頼むと他の人よりキレイに直してくれるから」と、補修現場の監督様からは毎回ご指名をされたりなど、様々なキズを直す機会をいただけています。

「他社が直せずに諦めたキズを直してほしい」といった難易度の高いご依頼も受けるようになりました。

ただ、私も最初から順調にここまで来たわけではありません。キズによって補修の難しいものがあるのですが、駆け出しのころは技術力が足りず、失敗をしてしまったことも数多く記憶に残っています。

自分を過信して大失敗しました

大失敗した案件があります。
それは、まだ私が補修の仕事を始めて3ヶ月ほどしか経っていない頃のことでした。

ある分譲マンションの広めのリビングです。キレイなマンションだったのですが、水によるシミと太陽光が長く当たったことによる劣化で、フローリングの広範囲が傷んでしまっていました。

大きさで言えば1メートル四方くらいの範囲です。言葉で書くと実感がないかもしれませんが、実際に床の面積で大きさを考えてみると、けっこう大きなキズなのがわかります。

当時駆け出しだった私には、そのキズの補修難易度がわかりませんでした。
「こんなキズの直しはやったことなくて大変そうだけど、できるだろう」くらいの気持ちで、いただいた仕事を受けました。

今ならわかることなのですが、実はそのキズはベテランでも直すのが難しく、非常に高い補修技術が必要なキズでした。

ベテランの補修屋になると、大抵のキズは直すのに一日かかりません。けれどあのときのキズは、今の私であっても恐らく一日で終わるかわかりません。簡単には色が合わないだろうというのが想像つく、異例なまでのキズの広範囲と損傷具合でした。今だったら、かなり高い補修技術が必要なことと補修範囲の広さから、10万円を超える見積りになるだろうと考えています。

それを、駆け出しの私は相場がわからず、確か3万円くらい。そして、実際にキズ直しを始めてからようやく、自分の腕前を過信していたことに気付いたのです。

何しろ、1メートル四方の大きなキズです。小さなキズならば、当時からキズをわからない程度まで直すことはできていたのですが、今回はとにかく規模が違いました。

当時の私は、「範囲が広いキズは少しの色の違いでも、元のキズのない場所と比べると色が大きく違って見える」ということがわかっていなかったのです。

わかりやすく言うなら、元のフローリングが明るいブラウン系の色合いだとしたら、広範囲が変色した所は暗いブラウンに見え、大きく色が浮いてしまいます。

そのため、全ての範囲を元の色と同じに見えるまで戻すには、小さなキズと比べても大変な技術力と労力が必要になります。

結局、そのキズ直しは午前9時から始めて、夜中の2時まで計17時間もかかるという大作業になってしまいました。

そして結果は、お客様が期待していたほどキレイに直すことができませんでした。「時間ばかりかけた挙句に直らない」と、お客様に迷惑をかけてしまいました。

自分の未熟さを実感し、現実を突きつけられました

お客様の反応は「あぁ、やっぱりこうなったか」といったものでした。

当時の私がまだ駆け出しだったのを、態度などで見抜かれていたようでした。

私に頼む前から、「このキズの補修は難易度が高い」ということがわかっていたのでしょう。それでも、私が手ごろな金額を提示したため、「試しにやらせてみよう」くらいな気持ちであったのかもしれません。
補修の料金をいただくことはできたのですが、釈然としませんでした。

創業してからそれまで、仕事が割と頻繁に来ていたため、「自分には腕がある」と思っていたところに、現実を突きつけられたような思いでした。

悩む日々が続き、後悔ばかりしていました

その一件以来、私は毎日仕事の反省ばかりしていました。
創業から半年が過ぎる頃までは、帰りの車は毎日反省会の連続。

「あぁすれば良かった。こうすれば良かった」

その日のキズ直しを反省しては、過ぎたことを後悔する日々が続きます。ちょっとしたことでも思い悩み、立ち止まっては悩み、自信を失っていきました。
夢の中にまでキズ直しで悩む場面が出てきてしまい、眠れない夜を過ごしたこともあります。

自分の技術に自信のなかった頃は、自分が補修屋であるにも関わらず「他の補修屋に頼めばいいのに」などと考えてしまうこともありました。

人生の分かれ道に立ち、心に余裕がありませんでした

なかなか調子が上向きにならないところに、さらに追い打ちをかけるようなことが起きてしまいました。当時、得意先だったハウスメーカー様からの依頼がぱったりと途絶えたのです。

当時は得意先だったハウスメーカー様からの売上が半分以上を占めていました。ですが、もっと安い業者を見つけたらしく、「値段を下げてほしい」という価格交渉を受けました。

「安売りしたら収入的に厳しくなり、続けられなくなってしまう」と思い、値下げの交渉を断りました。すると、メーカー様からの依頼がぱったりと途絶えたのです。収入は激減し、廃業の危機で焦りました。

そのころ、業界全体の相場を下げる安売り業者はたくさん出てきたのです。これから先、このままでは私も安売り競争に巻き込まれて、どんどん収入が減ってしまう、と想像できました。

仕事をしては毎日反省、お金にも余裕がない、、諦めて他の道を探そうか、、、。色々なことを考えました。

もし転職するとしたら、健康に興味がありマッサージも得意だったので、「整体を学んで転職するのもいい」とも思えたのです。(現実逃避です)。

ですが、転職したらまたゼロからスタート。苦しいだろうなというのが脳裏をよぎって、決心もつきません。

どうするかさんざん悩んだのですが、想いを天秤にかけたら「ここまでやってきた補修業を諦めたくない」、という気持ちが最後は勝りました。

そこからは腹をくくり、キズ直しの技術をもっと高めるべくがむしゃらに前に進む日々が続きました。当時のキズ直しの技術は、大多数の補修屋とほとんど変わらなかったからです。

「価格ではなく、圧倒的な技術力で差をつける。それしかない」と心を決めました。

お客様に向き合っているか?

その後、「キズが付く前よりキレイにする」と評判の技術を持つ、補修業界でのベテランである師匠の存在を知りました。

実際にお会いしたところ、当時の私のやり方とは全く違う次元でキズを早くキレイに直す技術を目の当たりにしました。そして、「ここで技術を身に付けたい」と一念発起して弟子入りし、根本的に足りない技術力を付けることにしました。

師匠の元で改めて補修技術を学ばせていただいた結果、技術はかなり上昇しました。同時に仕事も増え、様々な経験を積ませていただきました。

そして今では、他の補修屋が難しくて直せなかったキズをも直す、というような嬉しいご依頼をいただけるまでになりました。

お客様からの反応もかなり変化しました。

喜んでいただける度合いがそれまでに比べて大きく変わり、「この腕前なら」と違うお客様を紹介していただけることも段違いに増えました。忙しさで嬉しい悲鳴を上げられるようになった時期です。

 

現場の監督様からも、

「こんなに丁寧に仕上げてくれる補修屋さんは滅多にいないね」
「遠藤さんだから頼みたい」

と言ってくださることが多くなりました。

 

今になって、技術力は大事だと改めて実感しています。
技術がなければ過去のお客様のように、迷惑をかけてしまう原因になり得るからです。ですが、経験を積んでいくうちに、補修業にとって本当に大事なことは、技術力だけではないことに気付いていきました。

それは、補修屋は単に「キズを直す人」なわけではないということです。
言い換えると、「キズを直すことでお客様の笑顔を取り戻す」ことが仕事です。

きちんとお客様に向き合っているか。それが問われる仕事でもあります。
服装、挨拶など、お客様を大事にしていなければ、態度は随所に表れます。

技術力があることは当たり前。その上でお客様にどのように向き合うかが大事ではないかと思うのです。

でなければ全ては台無し。技術力もない上に態度も悪い。そんな補修屋に頼みたいと思えるでしょうか?

それからというもの、技術力が上昇したことで仕事のやり方も大きく変わっていったのですが、今度は自分だけでは収まらない別の問題が目に留まるようになってきました。

お客様をないがしろにする業者の存在

仕事の仕方が変わったことで気づくことができたのが、業界の体質です。

ある時、何十カ所もキズを直す依頼を受けたことがありました。約束の時間に出かけていき現場に入ったとき、ある違和感を感じました。

床、柱、壁……部屋のあらゆる所に、既にキズを直そうとした痕跡が無数に存在していたのです。

一般の人ではぱっと見てわからないかもしれませんが、補修屋の目にはキズを直そうとした痕跡というのは普段から見慣れているものであるため、とても目に付きます。

その仕事は、ただのキズを直す依頼ではなく、他の補修屋が直そうとしたけれど、中途半端に直せなかったキズをキレイに補修し直してほしい、という依頼だったのです。補修屋の目には「本当に補修したのだろうか?」と疑いたくなるように映る補修の跡でした。

補修業界は価格競争が進んでおり、1時間辺りの賃金で働く業者が多くいます。きちんと直せていなくても、時間が来たら帰ってしまうのです。
先ほどの仕事での前任者は、その時間で働く補修屋だったのです。

直すことに責任を持たず、キレイにならなくても時間で終わりになる。それではキズ直しを依頼する意味がありませんよね?「お願いしたにも関わらず、キズがキレイになるどころかむしろ悪化している」というような事例が、他にもたくさん存在します。

「キズ直しを頼まなければ良かった」と思える結果になり、「人に補修箇所を見せたくない」、「家に人を呼べない」など別の悩みを抱えたお客様もいらっしゃいました。

これが、替えの利かない、取り返しのつかない思い出の品に「頼まなければ良かった」と思えるような補修をされたら……と考えると最悪です。

キズを直すことに向き合う補修屋と、直らなくても時間が来たら帰る補修屋。
同じ補修屋であっても、仕事の意識がお客様に向いているか、自分の利益に向いているか、方向性はまるで正反対なのが現実です。

同じ補修屋なら、私は真摯にキズを直すことに向き合い、お客様の期待に応えたいのです。

キズをどう対処すれば良いかわからないお客様も多い

家にキズをつけてしまって直したいという場合、直すことを考えること自体が多くの人は「初めて」です。そのため、わからないことがたくさんあると思います。

もしキズがついてしまい、どうしたらいいかわからなかったら……。

持ち家に住んでいるのか、キズを付けるとまずい賃貸物件なのか。業者に頼むか、自分で道具を使って直すのか。費用はいくらかかるのか、誰にも内緒で直せるのか。など、きっとわからないことだらけでしょう。

お客様からの相談に対し、1つの答えを提示して「こうした方がいい!」と言うのは簡単です。「直した方が良い」と言えば、おそらくお客様は依頼してくれるでしょう。

でも本当は、何が一番良い対処なのかは、その人の状況によって違うのです。「直した方が良い」とはいえない場合もあります。

例えば、大きすぎるキズの場合は、交換や張り替えをした方が安く上がります。大きすぎるキズは、1メートル四方くらいの大きさになってしまうと、キズ直しではほぼ対応できない難しいキズになってしまいます。

大事なのが、お客様にとっての一番良い提案は何だろうか? ということです。

私は補修屋ですが、全てを補修で何とかしようとは思っていません。こういったキズの場合、事情を話して素直に交換を提案します。結果的にその方が喜んでいただける場合が多いからです。

お客様の立場に立った、キズの相談窓口としての責任

私が直しているものは「単なるキズだけではない」と考えたとき。最もお客様にとって良い選択肢は何なのでしょうか。

対処がわからず相談してくださっているお客様の状況を無視して「直した方が良いですよ」というのは、お客様の立場に立っていませんよね。プロであることの責任は、お客様に寄り添い、きちんとした考えを持った上でお客様に接しているかどうかだと考えています。

私なりに考えを実践してきた結果、今があると思うのです。紹介をくださるお客様や、リピーターとなって現場に呼んでいただける監督様、他の補修屋が直せなかったキズを直してほしいという依頼など、ありがたいことや嬉しいことがたくさんあるのです。

プロの補修屋としてのあり方を考え続けること。より一層キズをキレイにできるよう技術を磨き続けること。その上でお客様に喜んでいただけることは何だろうか?と日々考え続けること。これをきちんとやってこそ、補修屋として価値を提供できると思い、日々、活動をしています。