代表 遠藤の
今までとこれから

震災で大きく変わった人生

2011年3月11日に発生した東日本大震災により、私はキズ直しの道に入りました。
最初から補修屋をしていたわけではありません。

これは震災を機に補修業を始めるきっかけになったときの話です。

東日本大震災の様子

元々私は大学を卒業後、地元の静岡にある建設会社で、営業マンの道に入りました、その後転職を経て、医療機器会社で営業販売をしていました。

仕事は順調だったのですが、東日本大震災の発生後に会社の景気がとても悪くなり、私は仕事を失ってしまったのです。

履歴書を書いては落とされ、書いては落とされ
気持ちばかりが焦りました

当時、私は45歳。
次の仕事を探し回りましたが、なかなか再就職ができずに約8ヶ月、途方に暮れる日々を過ごしました。

50社ほどに面接の申し込みをしましたが、ほとんど書類選考の時点で落とされ、面接までこぎつけたのは10社も無かったのを覚えています。

なかなか就職できず、焦る気持ちが募る日々。
その末に下した決断は、「就職が難しいなら自分で仕事を起こそう!」というものでした。

それを決めてからは、「じゃあどんな仕事が良いだろうか?」と頭を切り替えて動くようになりました。
そして、色々な仕事の分野を探している内に「キズの補修」というものを知ったのです。
仕事自体の好み、手先が器用だということもあり、知ってゆくうちに「直すという仕事もいいな」と感じられたため、思い切ってキズ補修の道に入ることを決めました。

半年間の実務研修に通い、技術を身につけて仕事をスタートさせたのです。

現実の厳しさを痛感
地道に毎日とにかく動き回りました

今までやっていたこととは全く違う分野でしたし、最初は本当に大変でした。
自分では手先が器用だと思っていたのですが、「それだけで通用する仕事ではない」、と現場での仕事を経験する中で実感して悩む日々。

キズの部分の色を、元の色と同じに合わせる必要があるのですが、なかなか色が合いません。悪目立ちしてしまうなど、悪戦苦闘しながら技術を習得していきました。

自営業なので技術を磨くだけではやっていけません。自分で営業をすることも始めました。
ただ、営業に関しては元々話好きで、人と会うことに積極的な性格なので、そんなに苦に感じることはありません。

営業マン時代の経験を生かして、色々な工務店やハウスメーカーなどに連日自ら足を運んで資料を渡す、といった飛び込み営業を続けました。とにかく足を動かして地道に力をつける、ということをしていたのです。半年でおよそ2000枚の名刺を配りました。

その結果、徐々に仕事をいただけることが増えてゆき、半年過ぎる頃にはキズ直しの報酬だけできちんとした生活もできるようになりました。
もちろんゼロから始めたので上手くいかないこともありましたが、がむしゃらに日々を頑張った結果、次第にお客様からも喜んでもらえることが増え、現場の監督さんにご指名されるなど、リピーターになっていただけることも増えていきました。

毎日目にするドアに、
“怒りをぶつけた”大きなキズ跡

私には印象に残っている案件があります。
家のドアに大きなキズが出来てしまい、その補修のご依頼を受けたときの話です。

お宅にお伺いしたところ、リビングから玄関に出るところにあるドアに、コップを投げて破片が刺さった跡が大きく残っていました。

そのキズは、お客様が家族と喧嘩をして、怒りのあまり付けてしまったキズです。

ドア穴に空いたキズ補修

ドアというのは中が空洞になっている部分が多く、予想よりもはるかに衝撃に弱いです。
強い勢いで当たり方が悪いと、膝や肘が当たるだけで、足よりも大きいサイズの穴が空くということもあります。

そのドアは玄関に向かって通るドアなので、毎日必ず目に入る場所です。
見ないで過ごすことはできません。

キズを見ると今でもあのときの感情や喧嘩したときのことを思い出す、とお客様は仰っていました。

お客様は、その気持ちを抱えながら生活しているのが精神的な負担だったのです。家族に対する、負い目のようなものを感じていたのかもしれません。

家のキズを直していると、このようにキズをつけてしまった事情を話してくださる方もいます。ですが、この件で気付いたことは、キズを作ったことで「家だけではなくお客様の心も傷ついている」ということ。

そして、私のしていることは、「単にキズを直すだけじゃない」ということ。

これはあくまでも私の思ったことなのですが、お客様はキズを直してほしいだけではなく、嫌な思い出を、もう思い出したくなかったのではないでしょうか。

そう考えると、キズを直すということは、お客様の人生を左右することになる、ということに気付いたのです。

ドアの補修をし終わったとき、お客様からは「こんなにキレイになるなら早く直せば良かったな」と嬉しい言葉をいただきました。

その笑顔を見たとき、「あぁ、やって良かった」。心の底から感じることができました。

「こんなに直るんですか!」

それまでの私は未経験から独立して始めたこともあり、食べていくのに必死で、キズ直しの技術を上達させることをよく考えていました。
キズを作ってしまったことで悩むお客様に出会ってからは、私の中で何かが変わった感覚がして、「お客様に喜んでいただける仕事をもっとしていきたい」と思うようになっていきました。

キズ直しでお客様に提供できることを考え続けているのですが、その1つに「お客様の笑顔を作るお手伝い」があります。

先ほどのお客様の話のように、「キズをつけてしまう」というのは事故だけでなく、日常のストレスや怒りによって生じることもあり得ます。
特にドアの補修では、明らかに蹴って空いてしまったと思われる事例が多く見られます。

そのキズが存在しているだけで、お客様の笑顔や喜び、幸せが失われる可能性があるんだと私は気付いたのです。

あれから数年が経ち、多くのキズを直す機会がありました。直すのが難しいキズに直面することは沢山あります。同業の後輩に技術指導をする立場にもなり、尚のことお客様の悩みとなっているキズをよりキレイに直せるよう、成長していこうと考えてきました。

あらゆるキズを直す経験を積ませていただいた結果、以前の技術ではキレイにできなかった難しいキズも、今では自信を持って直すことができるようになりました。「こんなに直るんですか!」と喜びの声をいただけたこともあります。

今の私があるのは、ドアのキズ直しを依頼されたあの時のお客様のおかげでもありますし、これからも気持ちを忘れずたくさんのお客様の笑顔を作っていきたい」と考えて活動しています。

今は1つ、やりたいことが出てきました。

「あらゆるキズを直せる仕事がある」ということが、まだまだ世の中に知られていません。

キズを直すのに多くの人は価格を気にされます。「物を直す」と考えた場合、なるべく負担を減らしたいと考えるのは当然ですよね。

「新品と交換するしかない」と思っているお客様も多くいます。もっと安く済む「補修」という存在自体をご存じないのです。

本当はキズ直しで十分キレイにできるキズでも、ハウスメーカーや工務店に相談した場合、価格の高い交換をオススメされる、ということがあります。
交換しか選択肢を知らない場合、恐らくメーカーのオススメ通りに交換をすることになるでしょう。
その後、何かのきっかけで「補修」というものがあることを知り、「あのとき必要以上に高い金額を支払ってしまったんだ」と気付いても遅いですよね。

だから今私は「キズ直しというものをもっと知っていただく活動がしたい」のです。

そのためにもまずは、目の前の仕事で

  • お客様に正しく誠実に価値を提供してゆく
  • そして一人でも多くのお客様の笑顔を作るお手伝いをする

こういったことが大切だと考えています。

マジックアートリペア遠藤の代表として、1つ1つの現場とお客様に向き合いつつ、成長していければと考え、日々歩み続けています。